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HD800を改造する【SDRMod】

 

改造とはいわゆるSDRmodというやつです。「HD800 SDR mod」とかで検索すれば情報はたくさんあると思います。

ご指摘があればコメントしていただけると助かります。

 

改造の目的

HD800には、様々な欠点が指摘されています。例えば低音が弱すぎる点や、高域の癖などです。これらの欠点を克服するために、改造を施す人たちが一定数存在します。

2016年に、後継機であるHD800Sが、2018年には密閉型のHD820が登場しました。新機種と言っても、2009年に発売されたHD800の欠点を消すようにチューニングを変更しただけという意見もあります。それならば、HD800に少し手を加えることでHD800Sに近づけることもできるはずです!

改造の種類

改造には大きく二種類があり、壊す改造と壊さない改造があります。

後者はハウジング内に布を貼るなどの改造を指します。布を貼るだけならなにも壊していませんし、除去も簡単です。本記事で行う改造は壊す方です。ヘッドホンが動作不能に陥る事はまずありませんが、万が一ヘッドホンがぶっ壊れて正常に使えなくなってもよいという人だけ試してください。

HD800とHD800Sの違い

ドライバーはどちらも同じなので基本的な音の傾向は同じです。解像度についても両者とも差はありません。HD800SはHD800よりも音場がやや狭くなり、音の距離が近づきました。加えて高域が丸められ、低域が増強されています。

HD800SはHD800の高域の癖、いわゆる6kHzピークをヘルムホルツ共振器を用いて打ち消しています。リングラジエーターに筒状の共振器を仕込んでいるのです。

 

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Ring Radiator

改造パーツについて

さて、HD800とHD800Sの違いを理解したので、どうやって改造するかを考えます。必要なものはレゾネーターですが、これをどうするかです。コンプライのような低反発イヤーピースを適当に切り詰めて、リングラジエーターの穴に押し込んでも良いのですが、私は専用のレゾネーターを買いました。

そのレゾネーターというのが、タイトルにあるSuperDupont Resonatorです。このMODパーツはフランスのsorrodje氏が開発したもので、彼から直接購入できます。支払いはPayPalです。

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SuperDupont Resonator

上の写真が私のもとに届いた実物の写真です。これを環に突っ込むだけの簡単改造です。

素材は、紙とフェルトとウレタンフォームっぽいです。底は穴のない紙で、中間がフェルトです。一番上はコンプライみたいな質感の素材でできています。HD800Sのレゾネーターとは違って、底に穴がないためより広い帯域に効果を及ぼすらしいです。よくわかりません。

購入はこちらのページからできます。

SuperDupont Resonator : Summary and Interest Check | Super Best Audio Friends

メールアドレスがあるので連絡してください。値段は27ドルだそうです。(もちろん私も彼から直接購入したのですが、支払いが済んだのに一向に発送のメールをよこさないので進捗を聞いてみたら、忘れていたそうです。おっちょこちょいですね!)

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かわいいケースに入っていました

改造手順

さて、レゾネーターをいれていくわけですが、そのためにはヘッドホンを破壊しなくてはいけません。まずはダストカバーを取り除きます。すると、ドライバーを守っているフィルムがあるはずです。ピンと張っていて、指で押すとぷにぷにと反発があります。このフィルムを剥がすのです。接着剤でくっついているだけなので簡単に剥がれます。

まずはこうして・・・

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簡単に取れます

レゾネーターをぶち込みます

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これで完了です。もう片側も同じようにできたら完成です。こうして改造したHD800はHD800SDRと呼びましょう!かっこいい!

やり方はこちらの動画も参考にしてください。

www.youtube.com

動画ではイヤーパッドを外していますが、その必要はないと思います。レゾネーターを仕込むよりイヤーパッドを取り付けるほうが100倍めんどうくさいです。

改造後の音質の変化

音質はやはりHD800Sに近いです。6kHzのピークを取り除いたため、高域がまろやかになったのを感じます。この事によって、よりリスニング向けの、リラックスしたサウンドになっています。ただ、音場はオリジナルよりもやや狭まった印象です。6kHzピークがHD800特有の音場感の形成に寄与していたようです。

 HD800SDRはHD800Sよりも低域の解像度が高く、音色はクールめです。HD800Sの低域は若干濁っています。SDRの音がクールな音に感じられたのは、ピークの低減率がSよりも低いからだと思います。多分。

私の個人的な好みはSDRの方ですね。バランスが良く聴こえます。

まとめ

HD800の低域の解像度を維持しながら、高域の癖を取り除くことができるという点で、sorrodje氏のModは非常に優れています。HD800の欠点を克服するべく開発されたのがHD800Sですが、そこに新たな欠点が生まれてしまったのは残念に思います。SDRModは、両者のいいとこ取りといった感じでしょうか。

しかし、800と800Sはどちらもとてもハイレベルの音です。HD800SとHD800を厳密に聴き比べてみてはじめて、800Sの弱点が見えました。当たり前ですが普通に聴いている分には弱点なんてありません。

血眼で弱点を探し出して潰そうという努力としての改造は素晴らしいオタク精神だと思いますが、改造を施すのは面倒臭すぎますし、リスクがでかいです。確かに、この改造によって弱点のないHD800が手に入りましたが、十云万円もするヘッドホンを破壊するストレスでハゲそうになりました。

参考文献

HD800 "French Mod" aka "SuperDupont Resonator" | Super Best Audio Friends

SuperDupont Resonator : Summary and Interest Check | Super Best Audio Friends

SuperDupont Resonator : Summary and Interest Check | Page 33 | Super Best Audio Friends

On a 6kHz Helmholtz Resonator for the Sennheiser HD800 | Super Best Audio Friends

M.R.O.: Sennheiser HD800 Part3: In-depth analysis #1

M.R.O.: Sennheiser HD800 part3: In-depth analysis #2

Headphone Measurements | InnerFidelity

Sennheiser HD 800 S: Tweaked and Delightful...and a French DIY Response | InnerFidelity

Sennheiser HD 800 S: Tweaked and Delightful...and a French DIY Response Page 2 | InnerFidelity

Sennheiser HD800 S Impressions Thread (read first post for summary) | Page 17 | Headphone Reviews and Discussion - Head-Fi.org

HD800の微改造 | PHILE WEBコミュニティ